自作品の客観視について

 作品を仕上げる作業はめんどくさいのである。

 だから人は気がつくと「途中まで作った音声や映像を意味もなく何度も確認しちゃうあの時間」を享受しているのである


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 作業がキリの良いところまで来てしまい、今日はもう続きを作る気力が無い。ただ時間にはまだ余裕があり、ここでやめるのも勿体無い気がして何となく今まで作ったところをリピートし続けてしまう。結構あるあるなんじゃないでしょうか。

 作品作りに時間がかかっている場合は当然何度も確認したりぼーっと見返したりする時間もおのずと増えてくるので、次第に作者が自作品に慣れちゃう問題が発生する。
 仕方ない事ではある。が、これが運悪くイキスギてしまうと
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・面白いのかどうか分からなくなる
・不自然なところや物足りない部分に気付きにくくなる
・公開する前に作者が飽きちゃう
 →うーん、なんかもういいやってなっちゃう可能性
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 こんな事起きないし起きようが気にせず自分を信じて完成までこぎつけられる人は強い。が、そうもいかずボツリヌスしてしまう人も結構いるはずだ。そうですよね。そうだと言ってくれ

 ただちょっとした視点変更もとい客観視によってこの問題は解消できる(かもしれない)のだ!

 今回は個人的におすすめな「作ってる途中で自作品にナレチャッタ状態」から脱出できるかもしれない方法を紹介する記事です。その状態でない人も作業途中の気分転換などに試してみると意外な気づきがあったりするかもしれませんのでやっぱりおすすめします。

 視点を変えて自作品と再び向き合い
 新鮮さを取り戻して自信を確固たるものにし
 さらに「良さみ」な作品へ引っ張り上げよう!
 必要かこれ? もう始めちゃったのでやります

※音MADの記事のつもりですが結果的にそれを含めた創作全般の話になりました

※↓こちらのカレンダー企画に参加しています。25日目担当

 

1.気恥ずかしさを利用するパターン

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 なぜ投稿してから編集ミスに気づくんだ……

 完成にはたどり着けたものの、公開してから何かと後悔(公開と後悔がかかっている)した経験はないだろうか。作ってる途中には全く気がつかなかった気に入らない箇所やミスが出るわ出るわ。

「この作品は今誰かに見られている」「誰でも見られる状態にある」という緊張感や気恥ずかしさが見方をネガティブにするからである。もう人前に出しちゃって引き返せないという状況がかえって「問題点探し」の神経を強化するのだ。人体はことごとく都合の悪い働きをするのである。

 つまりこれを逆手に取り、人の目が多いところに早めにぶん投げる。
 定期的に作品が大勢の前にさらされている状態を味わいながら、そこで確認作業をする。公開してから後悔する前に公開するというわけだ(神ギャグ)


「客席」で画像検索してそこに動画をはめこんで再生する

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 公開処刑を疑似体験

 大勢が一箇所を見ている画像を用意しそこに動画をハメ込んで再生する。意外と死にそうな気分になりあちこち直したくなる箇所が出てくる
 人の視線には妙な力があり、画像であっても視線に晒されると結構ソワソワするのである。目のアップが使われている犯罪防止ポスター等もこの効果を狙っている(実際の防止効果については諸説あり)


Twitterに投稿する

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 実際に誰かに見てもらうというわけではなく、ただ「Twitterに投稿する」である。テスト投稿用アカウントを作ってそこから投稿するだけでよい 「いつ誰に見られるかわからない状態で確認する」のが目的である。

 Twitterは大勢の人間がドワドワ歩いてるようなSNSなので、通りすがりの誰かにいつ見られるかわからないと言う感覚を味わいやすく、その状態で確認すると神経が研ぎ澄まされ改善したい点とかが見えてくるのだ。実際はフォロワーが0であればハッシュタグでも添えない限り誰かに見られることはほぼ無いが、とにかく公共の場に流しちゃいました状態でソワソワしながら確認するのが大事である

 もちろん普通にフォロワーに公開しても良い。同じ界隈の人に見られていると(もしくはそう思い込めば)さらに効果が望めるぞ。完成していなくとも途中経過として匂わせ公開みたいな事すると何となく引き返せないようなプレッシャーも得られてより完成も近くなるかもしれない(まあつまりTwitterっぽいSNSならなんでもいい)。

2.評価する側を演じるパターン 

 作者の視点を捨てさり完全に評価を下す側の人間になりきって初見っぽく確認してみよう。心を鬼にして自作品への愛情を一度消し去りゼロの状態で向き合うのだ。死ぬぞ

●一人講評会を開く
 自分は講師である。これは生徒が提出してきた音MADである。みたいな脳内設定でわざと厳しめの評価を下してみましょう。
 テキストやノートに講師の意見っぽい言葉(後述)を次々書き起こし、それに対して「言われてみれば確かにそうだ」と自分で思ってしまうものがあれば改善すべき点として残す

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・「いいですね。ただもう少し~」で始まる批評文を書く
・「なぜここでその音を入れたんですか?」「なぜこの色の組み合わせ?」「なぜこのフォントなのですか?」「この素材と曲を選ぶ理由は?」「なぜここで爆発するんですか?」と質問攻めをする なんとなくで加えた心当たりがあるネタなどに、あえて疑問をぶつけ調整を試みることでそれが必然性や説得力の強化につながりそう
・「意外性が欲しい」とか書く。現状で満足せずさらにひと展開ある動画にしたい時などに有用だが沼への入り口

知らない誰かが作った音MADとして再生する
 ネット動画は映画館と違い生されても最後まで見てもらえるとは限らず、視聴者には飛ばし飛ばしで見る人も全然多いし途中でやめてどっか行っちゃうのも普通である(まあ映画も途中で帰る人いるけど)
 作者がその作品に捧げる情熱のほとんどは視聴者に伝わっていないと言ってもちょっと過言なくらい。
 というわけで視聴者を演じながら再生する。自分は戻るボタンにカーソル(もしくは画面に親指)をセットし隙あらば移動するくらいの飽きやすいタイプの視聴者のつもりで、さらに動画のすぐ横に別ウィンドウで知らないキャラなどの適当な画像を表示させておき、それをよく知らない作者のアイコンに見立てその人の作品だと思って視聴する

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 そうすると『このパート冗長で動画閉じられるのでは……』みたいに感じてくる 見落としを探すと言うより飽きない動画かどうかを検証する作業ですね。最後まで楽しめたのであればおそらく良作だなぁ そうに決まってる

類似作品と見比べる
 貴方が作っている作品には類似作品がある。インターネットを漁れば大抵出てくるはずだ。その類似作品を見て伸びているなら何故伸びているのか、評価されていないのなら原因はどこか等を分析したり、純粋に良いと思った要素を参考にしたり逆にここをこうすればもっと良くなるのでは、と思った部分も自作品に反映したりしようじゃないか。

3.変化させて再生するパターン

 作品自体や自分自身の再生環境をちょっと変化させてから再生する。一番効果的だし分かりやすいかも。音声と映像わけます

音声

●キーを変えて聴く
 音源全体のキーを丸ごと上げるか下げるかして聴くと全然違って聞こえるので新鮮な気持ちで確認ができるぞ。聞き慣れていたところが実は初見にとっては不自然な音ハメだった、みたいな事に気づくかも 歪むほど変えてもアレなので±2とかでいいと思います

●左右逆で聴く
 プラグインで音源の左右を入れ替えたりヘッドホンを逆向きにつけたりして聴く やや曲によるが新鮮味を得られる
 左右に素材を振って配置した時なんかは均等のつもりでも入れ替えて聴くとやっぱり偏ってたりするので、そのバランス確認としても重要である。ついでにモノラルにしても聴きやすいかどうかも確認だー

iTunesなどのメディアプレーヤーにバウンスして聴く
 編集画面で再生するのと一度書き出して音楽再生用のアプリに入れて再生するのとでは感覚的な聞こえ方が全然違う。とにかく頻繁に書き出して確認だ 音楽再生アプリで他の曲と聴き比べるのも重要である。素材と曲の音量バランスは大体プロの音楽のボーカルと伴奏の音量バランスに当てはめて考えて差し支えないので、とにかく参考にするのだ

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映像

●反転する
 反転チェックはいいぞ。画面の構図や視線の誘導が不自然じゃないかみたいな事に気付きやすくなるぞ

●遠く離れて見る
 細かい動きや作り込みに集中しすぎると全体像が見えなくなりがちである。いったん遠くはなれてから再生して(というか再生してから遠くに離れて)ざっくりと画面を確認だ。その時映像内で分かりやすく動いて見える部分が大体初見の視聴者が見るところである。最初から最後まで細かすぎる映像が続くとどこを見たらいいかわからず印象に残りにくいので、画面内に色々敷き詰める場合でもどれか一つは大きめに表示したいところ

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●電気を消す
 部屋の明かりを完全に消し、かつ全画面で再生する。映像しか見えない映画館状態。とかキーボードとかエナジードリンクなど周囲の無関係な情報をいちど完全遮断し全神経を映像に集中させることで細かいミスなどが見つけやすくなる。

スマホで直撮りする
 スマホのカメラで直接動画を撮影し確認する。一歩下がって冷静な目で見てる感じになるぞ。撮影した動画をさらに外出中など今すぐには直せない状態で確認すると気になるところがもっとあれこれ出てくる

4.一旦忘れるパターン

 一旦作るのをやめて忘れる。寝かせるのだ。こちらも定番どころ 作っている時の苦しみや喜びを忘れ熱が冷めるまで待つ
 時間が経過してからふと再生する最初の瞬間がだいじだ。脳が思い出す前に「今の変だったかも」と思った箇所は瞬時にメモである。もし面白いじゃんこれとなればきっと面白い作品である。自信を持って再開だ。寝かせている時間が勿体無い場合は↓

●別の作品に取り掛かる
 新作に取り掛かり情熱を完全にそっちに注ぐ。その新作で頭が一杯になっている時にふと寝かせていた前の作品を再生だ

●凄い作品を見まくる
 自分が目標にしているような他の人の凄い作品をジャンル問わずとにかく視聴しまくり、目や耳が肥えてきたところでふと自分のを流す。自身の作品の位置づけを把握できる。そこで極端な落差にぶち当たらなければとりあえずは負けず劣らずということで再開である。ただ大概は絶望する

5.人に感想を聞くパターン

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 人に見せてアドバイスや感想をもらう。まあ最強ですよね

 自力で視点変更して得た気づきにも十分効果はあるが、自力である以上は生きてきた中で構築された自己の価値観が土台になった見識であり、やっぱりどっかしらにバイアスはかかっている。あらゆる思い込みが取り除かれた究極の視点変更をしたい場合は自分以外のにんげんから意見をもらうのがつよい。自分が今まで気付きもしなかったところを一言目に指摘してくれたりする。あと純粋に褒めてもらって喜ぶのもモチベーションキープになります

 本当にどうしようもなく悩んでいるときは人に聞くのがおすすめだ。ただその一方で、アドバイスや意見を片っ端から採用していくだけでは形骸化したものになりかねないので、軸として譲れない要素を見極めてバランスを考えるのが大事である。
 アドバイスを求めていても相手に気をつかわれる場合もある。そういう時は「改善すべき点が3つあるとしたらどこ」みたいな聞き方をするといいかも


さいごに
 客観視は無理にやることではない。やりすぎると自分らしさを見失う可能性もあるし作業が理屈っぽくなってしまい作る楽しさを見出せなくなることもある
 最終的に大事なのはもちろん自分がどうしたいかだ 俺はこれでいいと思っているのでこれでいい。文句あるか! である。
投稿することが目的(流行りに乗るなど)だったり、やりたいことできればかまわんというスタンスならそれこそ勢いが大事ですしね。

 ただもっと良くなるはずだと悩んでいるとか最適解に近づけたい時や、自作品に対する感情が無になってしまった、途中で投げそうみたいな悩みを少なからず解消したい時には途中途中での視点変更が効果を発揮するかもしれないので、是非試してほしいと思う

 どうしても自作品に良さを感じられなくなった状態から脱することができず、モチベーションも下落し途中で諦めたくなった場合でも、捨ててしまわずに公開はすべきである。183集に入れるなどでも良い。なんらかの形でとにかく出すのである
『ただただ失敗に終わった』という経験だけ残るより『ボツ作品を投稿した』状態の方がたぶんなんかまだマシというかポジティブな感じがする。作者にとって失敗でも視聴者からすれば最高かもしれんし、もしかしたら仕上げてくれと言われるかもしれません

 いかがでしたでしょうか。

 というわけで今回はこの辺でおわります
 ありがとうございました。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ところでこの記事に客観性はあるのか……???? 

 結局視点を変えて気づきを得る方法自体が殆ど実体験に基づくものでゴリゴリの主観が入っている。そもそも冒頭で『個人的におすすめな』とか書いてる時点でもう主観じゃんね!

 自己矛盾を孕んでしまう事に今更気づき自分で呆れてますが、とりあえず公開するのが大事なので公開しています。まあこうならないためにも途中途中で視点を変えてふと我に返るのが大事ということです。
 この際メタ構造的なブーメランオチという方向で解消しようかなと考えています。よろしくお願いします。駄目か? うーん客観的な意見をくれ……

 

 

参考
183とは (イヤミとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
自分の絵を客観的に見たいならその絵とは距離をとるべき | アートの正門
初心者むけの話:自分の作品を客観視できるか?: 大岡俊彦の作品置き場
自分が制作したデザインやイラスト等を客観視するのに何か良い方法はありますか? - Quora